それでも越えられなかった壁。激動のシーズンについて指揮官に話を聞いた。
決勝戦で感じた 「対応力」の必要性
率直にいえば、決勝はより良い環境で試合をさせてあげたかったですね。強いセットピースを軸にモメンタムを使って前に出る。そして、タレントぞろいのBKがあらゆるオプションを駆使して仕留めるのが、今季のスタイル。どうしようもないとはいえ、あの天候ではよい部分を出しづらかった。それでも前半最後の時間帯に、ボールを動かしてトライを奪った選手たちを誇りに思います。ゲームを振り返ると、帝京もハンドリングエラーが多かった。そうした状況にもかかわらず、対応力で上回られた点は相手の強さを認めざるを得ません。エリアの使い方、PGによるスコアボードプレッシャーといった試合全体のコントロール。個の能力に差はなかった、といまでも信じていますが、試合巧者ぶりはさすがでした。一方で我々はミスを重ね、ペナルティを与えて、キックで得点を許す。焦りが生じて、さらなる悪循環に陥る。本来は少しでもスコアで上回り、重圧をかける展開にしたかったのですが、逆にそうされてしまいました。
もっとも、これからの明治のチャレンジすべきテーマが明確になったとも言えます。想定外の環境や事態であっても、自分たちの強みを活かせるシチュエーションをつくる。そのための戦い方を身につける。もちろん「前へ」の精神は忘れません。常にアタッキングマインドを持って仕掛ける姿勢は、当然残さないといけない。繰り返しますが、身体能力や局面ごとのスキルは五分、あるいは互角以上だったと思います。流れを含めて、よりスマートにゲームを進める必要性を感じました。「能力を最大限に発揮するために会得すべき武器」という表現が適切かもしれません。いずれにせよ、チームをよりアップデートさせます。
現実は簡単ではない だからこそおもしろい
「学生スポーツは4年生のもの」とよく言われますが、それが際立ったシーズンでした。キャプテンの廣瀬をはじめ、下級生の頃からゲームに出ていたメンバーが最上級生になり、チームの中心を担ってくれました。それに加えて、試合に出ていない選手の姿勢もすばらしかった。最後まで後輩たちを引っ張り、すこしでも雰囲気を良くしようと自分自身の努力も怠らない。自覚の強い選手が非常に多く、「ONE MEIJI」のスローガンを実現してくれた一年間だったと思います。だからこそ勝たせてあげたかったですね。負傷していた廣瀬が準決勝から復帰し、早稲田に大勝した京産大を破って決勝に挑む。チームのムードも非常に良く、周りの期待も大きい。勝てば最高のストーリーでしたが、現実はそう簡単ではない。それがラグビーの難しさであり、おもしろさなのでしょうね。がんばってもうまくいかない、思い通りにならないこともある。それは、彼らのこれからの人生においても同じ。なにも恥じる必要はありません。次のステージでも、この経験が役立つ時間や場面が必ずある、と信じています。
新しいスターを生み出す 大きなチャンス
来季の明治は、次の一歩を踏み出すのにふさわしいチームだと考えています。主力選手の多くが卒業し、悲観的に感じられる方もいるかもしれませんが、わたしは、そうは思いません。「我こそがリーダーだ」という選手がたくさん名乗り出てくるチャンスだと捉えています。カギを握るのは競争力です。例年以上に活性化させ、101年目以降の新たなスターを生み出したい。幸い、ポテンシャルの高い選手はそろっています。さまざまな視点でメンバー争いやチャレンジを行い、チームづくりを進めていきます。