早稲田との再戦 マインドセットの難しさ
望んでいた結果が残せず、チームを目標とする場所まで導けませんでした。年末年始はラグビーがテレビでたくさん放送されているので、「本来ならここにいるべきだった」「学生たちをここに連れていってあげたかった」。いろいろな思いが交錯して、エネルギーを充電するのに、いままで以上の時間がかかりましたね。対抗戦は帝京に負けている以上、完璧とは言えませんが、パフォーマンス自体は悪くなかったと思います。帝京戦に関してはセットプレーに幾分の課題を残したものの、いかんせんラグビーをさせてもらえる時間が少なかった(約20分)。そのフィールドプレーを見ても、フィジカルで圧倒的に劣る場面はなく、修正が必要なのはセットプレーだけと感じるほど、次への課題が明確になったゲームでした。早稲田には、我々のラグビーをしっかり表現して勝てましたし、いい流れで次のステージの入口には立てました。
ただし、その早稲田との再戦となった大学選手権の初戦は非常に難しいものになりました。選手たちには、「まずは一つひとつ乗り越えないといけない相手がいる。とくに早稲田は昨季の明治と同じ立場なので、死にもの狂いで向かってくる。受けに回るとやられる。だからこそ我々はハングリーでなければいけない。そうやって一戦一戦勝ち進んだ先に、もっとも高い壁である帝京がいる」というメッセージを出しました。微妙な部分ですが、いま振り返れば、早稲田を過度に警戒した結果、我々がもっとも避けるべきゲーム展開になってしまったのかな、と。ゲームへの入りも硬く、本来は明治が有利に運ぶべきキッキングゲームでも押され、修正もきかなかった。「早稲田には二度勝てない」。このジンクスも悪いほうに働いたと思います。
あくまで結果論にはなりますが、「明早戦のスコアや内容を見る限り、実力に差はある。なにも心配はいらない」。もちろん早稲田が素晴らしいチームだという前提のうえで、そういう強気なメッセージを発信してもよかったかもしれません。そうすると、逆に油断が生まれた可能性もあって、難しいところなのですが……。いずれにせよ正解は誰にもわかりませんし、わたし自身、いまもなお、考えを巡らせています。
創部100周年は「前へ」「重戦車」に原点回帰
とは言え、その早稲田が決勝まで進んだのですから、我々も帝京に挑戦できるだけの実力をもったチームだったと自負しています。その一方で、帝京があれだけの力を発揮している以上、まだまだ努力が必要だと感じさせられたシーズンでもありました。そこを踏まえて、創部100周年の特別な節目を迎える来季は、明治ラグビーの原点である「前へ」「重戦車」という言葉に立ち返ります。セットプレーのインパクトをはじめ大学ラグビーの頂点を走る帝京に対して、真っ向勝負できるチームは明治しかいないと思っています。そのためにはFWの再構築はもっとも重要。今季から積み重ねているスピード、パワー、クイックネスというすべてを兼ね備えたフィジカル強化をベースに、「サイズ」も重視していくつもりです。またBKに関しては、選手個々の特徴やポジションに適した身体づくりを施していきます。
いま頂上にいる帝京に、力勝負でいかに対抗できるかが我々のプライド。小細工はせず、100年の歴史と原点をしっかりと見直して、再構築に着手します。なにより私自身が明治FWのOBですから、とことんこだわっていきたいですね。