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【神鳥裕之監督】4年生は芯の強い選手が多かった。 だからこそ勝たせてあげたかった(VOL.30)

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シーズン途中での就任という難しい条件ながら、明治を大学選手権の決勝まで導いた神鳥裕之監督。
チームの実力を確かなものにさせた指揮官に心境を聞いた。
 

厳しい道のりをあえて楽しむ 大学日本一のためのカギは勝利への執着心

 対抗戦の終盤で帝京、早稲田を相手に連敗しましたが、直接的な敗因は、それまでに本当の意味で緊張感のあるタフなゲームを経験できなかったことにあったと思います。 筑波、慶應はレベルの高いチームでしたが、結果的に大差で勝利したために、厳しい展開の試合を勝ち抜けるだけの力をつけられなかった。 しかし逆に言えば、大学選手権に向けて非常によい薬、経験になったことは間違いないですね。 まったく手が届かない相手だとは思いませんでしたし、緊張感の高いプレッシャーゲームを経験していけば十分に勝機はあると感じました。
 その大学選手権に向けて、選手にどのようなメッセージを出そうかと考えたとき、当初は、「対戦相手のことは気にせず、自分たちの力を信じて一つひとつ戦っていこう」という内容が頭に浮かびました。 ただ正直に言うと、あまりしっくりこなかった。 監督の言葉はチームにとってすごく重いもので、自分が出すメッセージがチーム全体のマインドセットに大きな影響を与えると考えたときに、ありきたりすぎてつまらないな、と(笑)。
 そこで改めて対戦相手を想定してみると、とてもハードな道のりだということに気づきました。 当然、どこが勝ち上がってくるのかはわかりませんが、前評判通りなら、どう考えても明治の道のりがいちばん険しい。 でも、そのストーリーをすべてクリアできればすごく面白いはずで、私自身ワクワクしてきたんです。 だから、そのワクワク感を選手にも伝えようと、「俺は昔、こういう立場から優勝したチームを知っている。それが3年前の明治だ」と発信しました。
 そのうえで大学日本一のためのポイントとして示したのが、勝利に対する執着心。 ひとつのボールにかける執念や、ボールを持っている選手へのサポートなど、小さな努力、積み重ねが勝負をわけると伝えました。 明早戦で相手SHの宮尾君に奪われた逆転トライが象徴的で、明治のパスミスからこぼれたボールを蹴られ、それを拾われて、そのままインゴールまで運ばれてしまった。 しかし改めてレビューをすると、このとき明治がセービングできる瞬間はあったんです。 そのシーンを選手たちに見せて、「人任せにするのではなく、全員が身体を張ってボールに飛び込む気持ちがないと、トーナメントは勝ち抜けない」というメッセージを出しました。 特に天理戦や早稲田戦で、キャプテンの飯沼がそういうプレーをたくさん見せてくれて、チームにドライブがかかっていったと思います。

創部百周年に向けて組織と競技両面で入念な準備を

 今季の4年生は芯の強い選手が多かった印象です。 本質的な部分で何を大事にしなければいけないのか、をよく理解していました。 また、大石(康太)や江藤(良)に代表されるように、それまで紫紺やペガサスでの経験が少なかった選手がトップの試合に出ることで、ルビコンにいる下級生の新たな目標にもなりました。 そういう選手たちが集まっていたからこそ勝たせてあげたかった。 私自身、就任1年目ということもあって、一生忘れられないチームになるでしょうね。
 来季は創部99年目にあたるため、その翌年の百周年を見据えて、しっかりとしたビジョンを作りたいと考えています。 組織面はもちろんのこと、「前へ」の哲学も継承していかなければいけない。 なにせダイレクトフッキングをしただけでニュースになるようなチームですから(苦笑)。 フィジカル面で常にアドバンテージを持ち、才能ある集団がひた向きに戦い続けるチームを継続して作っていきたいです。