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完敗の先の希望 後輩たちに新しい文化を継承できた(VOL.30)

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飯沼蓮主将


苦闘が続いた対抗戦。尻上がりに調子をあげ、ファイナルまでたどり着いた大学選手権。
少数のスター選手に依存することなく、本当の意味でチーム一丸となって戦い抜いたシーズンを振り返ってもらった。
 

チームに根づかせた新しい明治の文化

――まずは今季の総括からお願いします。
 これまでの明治は能力の高い選手が揃うことで勝ってきた歴史がありました。 でも今季は昨季までのようなスペシャルな選手があまりいないなかで、シンプルなことを必死に、ひた向きに追及していきました。 神鳥監督はよく〝凡事徹底〟とおっしゃいますが、プレーも私生活も当たり前のことを当たり前にやり続けたからこそ、ここまでたどりつけたのかな、と。 優勝こそできませんでしたが、後輩たちには新しい文化を継承できたと思います。

――よい意味で、明治らしくないチームでした。
 ただ、最終的な結果(大学選手権優勝)に結びつかなかったのは、ペガサス(A・Bチーム)とルビコン(C・Dチーム)の間にどうしても生まれてしまうモチベーションの差を埋められなかったからだと思います。 春や夏の段階では克服すべき課題と捉えて、何か問題が起これば、すぐに集まってミーティングを行っていました。 でもシーズンが深まると、僕や副将の大石(康太)も自分のことで精一杯になってしまって……。 こうした問題を解決するために、シーズン終盤に時間や力を回せなかったのは悔やまれますね。
 

4年生の積極的な姿勢と柔軟なプランニング

――対抗戦を振り返ると、帝京と早稲田に連敗し、苦しい時間が続きました。 この苦境をリーダーとして、どのように乗り越えようと考えましたか。
 実は明早戦が終わって、大学選手権に向けた初日の練習日が雨で、さらに練習内容も身体的にきついフィットネス。 だから、みんなの表情も暗かったし、雰囲気もよくなかったんですよ。 特に4年生が落ち込んでいたら、間違いなく後輩にも伝わって、ますます状況が悪くなります。
 だから、すぐにペガサスの4年生をその場に集めて、「どんなに身体がつらくても、気持ちが乗らなくても、最後までやりきろう」と伝えました。 「4年生の雰囲気が悪いと、下級生はもっとモチベーションが下がる。チームを盛り上げるような声かけをしたり、質の高い練習を背中で見せて、全員で雰囲気をいいものにしていこう」と。 強度の高い練習のときには、特に4年生が積極的な姿勢を見せることで雰囲気はよくなっていきましたね。

――よく言われることですが、4年生の姿勢は大事ですよね。
 神鳥監督がこの時期におっしゃっていたのが、「『この負けがあったから(大学選手権で)優勝できた』と言えるように、ターニングポイントにしなければいけない」ということ。 だから結果は結果として受け止めて、次に活かしていこうと思えました。 さらに神鳥監督は、「俺は昔、こういう立場から優勝したチームを知っている。それが3年前の明治だ。トーナメント表を見ても立て続けにリベンジできる機会がある」とおっしゃられて、そこでもう一度スイッチが入った感じですね。
 

  ――大学選手権に入って、天理、早稲田、東海を相手に勝ち上がっていくチームの姿は頼もしく見えました。
 対抗戦で帝京、早稲田に連敗したのは事前のゲームプランに縛られすぎたことが大きな原因でした。 それはもちろん大事なのですが、固定観念になってしまって、状況に合わせた臨機応変な対応ができなかったのも事実です。
 その反省もあってミーティングの段階から、「相手のディフェンスは前に出てくる傾向があるけど、実際は流して守るかもしれないから、それにも対応できるようにしておこう」など、さまざまな状況を想定した準備ができたのがよい方向に働きましたね。
 あとは試合中のコミュニケーションの量を増やしました。 ポジションによって気づくことは違うので、たくさんの選手からの情報を僕や伊藤耕太郎に集約して、状況に応じてプランを変えたことで、うまくいくようになりました。 そうやって勝ち抜くたびに自信がついて、最後は本当にいいチームになりました。

――ただし、決勝の相手となった帝京は本当に強かったですね。
 ブレイクダウンや接点の圧力が、まるで違いました。 用意していたサインプレーもすべて止められましたし、セットプレーも苦戦が続いて……。 悪いことが重なって、正直、パニックになってしまったところもありました。 負ける試合はすべてそうですが、うまくいかないことが多すぎましたね。

偉大な先輩と同期の盟友 偶然言われた同じアドバイス

――今季はキャプテンという立場をまっとうしました。 どのように振る舞い、どのようなプレーをすることでチームを牽引しようと考えていましたか。
 対抗戦の最後の2試合に負けたときは、僕自身のパフォーマンスがよくありませんでした。 それで当時とチーム状況が似ていたこともあって、僕が1年生のときにキャプテンだった福田健太さん(トヨタヴェルブリッツ)に相談したんです。 そのときに健太さんからは、「自分も対抗戦のパフォーマンスがよくなくて、当時監督だったキヨさん(田中澄憲前監督)に『自分が活躍することがリーダーシップになるから』と言われた。 いまのプレーは蓮らしくないから、もっと自分の強みを出していったほうがいいよ」というアドバイスをもらいました。
 たしかに下級生の頃はもっとワクワクしながらプレーしていたし、当時の感覚を思い出して、チームよりも自分にフォーカスするようになってからはパフォーマンスも上がっていきましたね。 しかも、健太さんに相談したのとほぼ同じタイミングで大石から呼び出されて、「蓮はプレーに専念してくれ。チームのことは俺がやるから」と言われたんです。 ふたりからまったく同じことを同じタイミングで言われて、決意が固まったというか、確信が持てましたね。 ピンチのときに、大事なことに気づかせてくれて、「神様、ありがとうございます」みたいな気持ちでした(笑)。

――それはすごい偶然ですね。では最後に、これからの目標とファンの皆さんへメッセージをお願いします。
 次のワールドカップを本気で目指します。 リーグワンは4月から登録できるそうなので、試合に出てどんどんアピールしたいですね。 夢や目標は大きく持って有言実行したいと思います。
 それからファンの皆さんには、つらい時期や負けて苦しい時期に支えてもらいました。 本当に日本一のファンの皆さんだと思っているので、これからも明治大学ラグビー部への応援をよろしくお願いいたします。