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【神鳥裕之監督】「強化に魔法はない。当たり前を徹底的に積み上げていく」(VOL.34)

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伝統への回帰とさらなる進歩、そして結果。ひと筋縄ではいかない命題を掲げ、100年目のチームを率いる指揮官に話を聞いた。

選手の特性に合わせて緻密にサイズアップ

 100周年のシーズンが始まるにあたり、「前へ」や「重戦車」といった、明治らしさを色濃く出せる一年にしよう、と選手たちには伝えました。また、ラグビー界全体の競技力があがるなかで、「重戦車」も現代に即したものにしたい。強さや重さだけでなく、スピードや機敏さも兼ね備えた「ハイブリッドな重戦車」をつくるために、ここまでは努力を重ねてきました。春シーズンを終えたいま、進むべき方向は間違っていない、と実感しています。
 こだわったのは、選手一人ひとりのサイズアップです。従来は一律でフィジカルやフィットネスの向上に努めていましたが、個々の特性、ポジション、強み、弱みに合わせて、3つのグループに分けてトレーニングを行いました。FWの前5人は身体を大きくし、SHや、WTB、FBなどのアウトサイドバックスはスピードを重視する。バックローやCTB、インサイドバックスの選手は、そのどちらもバランスよく鍛える。これを基本線としたうえで、たとえばBKでも身体を大きくしたい選手に対しては、コーチやS&C、PPT(フィジカルパフォーマンスチーム)が連携を取ってカスタマイズしていく。ハイブリッドな重戦車をめざし、より緻密なサイズアップに取り組んだことで、身体の変化には大きな手応えを感じています。

帝京を上回る接点の強さとセットプレーをめざす

 重戦車の生命線となるスクラムに関しても、対戦がなかった帝京以外には十分に通用しました。もちろん細かい改善点はありますが、相対的に見ればいい形で成長しています。ただし我々のめざすところは、そこにとどまりません。大学トップのセットプレーを有する帝京にどこまで対抗できるか。ここを基準に強化を進めていきたい。サイズやフィジカルの向上も同じですが、そのための魔法はなく、当たり前のことを徹底的に積み上げていくしかありません。フィジカルやセットプレーで一定以上に戦えれば、選手個々のスキルや才能豊かなBK陣など、帝京を上回る多くの要素を活かせるはずです。
 とくにBKは従来からタレントがそろっています。昨季のメンバーから抜けたのは、(石田)吉平と(齋藤)誉哉だけ。そこに才能のある池戸が加わり、FBで機能しています。今季の明治の武器となるのは間違いありません。このタレントを活かせるか否かは、やはりFWの接点やセットプレーにかかっています。チームを大きく飛躍させるカギにもなるので、さらにレベルアップさせたいですね。

伝統継承のためにも優勝しなければならない

 チームの雰囲気はいいと思います。4年生全体が本当にしっかりしていて、リーダー陣に負担が集中していない。主将や副将に負荷がかかり過ぎると、辛くなって、それがチームのムードを悪くするケースはよくあるんです。廣瀬と(山本)嶺二郎に限らず、それぞれのメンバーが主体性と責任を持って引っ張ったり、発言しています。下のチームの練習を見ても、最上級生がリードしてくれている。みんなでチームをつくろうという意識がよい作用を生み出しているんでしょうね。
 明治は常に優勝をめざすチームであって、目標は大学日本一以外にありません。100周年の節目に、さらにチームが発展できるように、伝統を継承していくのも我々の大事な使命。そのためにも必ず優勝しなければいけないと考えています。