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【スペシャルインタビュー】2015年ワールドカップ日本代表 田村優 (VOL.12)

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先日のW杯で、ジャパンの躍進に大きく貢献した田村優選手(10年卒・NECグリーンロケッツ)。
明治の中心的存在・田村熙選手の兄として、ファンからはよく知られる存在だ。
明治在学中の明早戦では、SOとして4年連続のスタメン出場。世界と明早戦をよく知る男に話を聞いた。

見ている人の心を動かすラグビーをして、早稲田に勝利してほしいです


ピークの作り方を覚えた明早戦での経験

――まずは明治で経験された明早戦のことから振り返ってもらいたいと思います。
公式戦のデビューが早明戦。それも1年生ながらSOでスタメンに抜擢されました。
先輩がケガをされたということもあって、いいタイミングでいいチャンスをもらいました。
明早戦に出たくて明治に入ったので、緊張よりもワクワク感のほうが大きかったですね。

――翌年はチームが振るわず、大学選手権への道が閉ざされた状況での明早戦でした。しかし、後半ロスタイムに早稲田がコンバージョンを失敗して、僅差の勝利(24○22)を果たしました。
当時の4年生のまとまりもすごかったですし、今でも忘れられない試合のひとつですね。勝ち方も劇的で、最高でした。

――この試合では、キッカーとして4本すべてのキックを成功させています。
チームを代表して出ているので、こういう僅差の試合では絶対に決めないと、という気持ちでした。

――4年生のときは6戦全勝で迎え、優勝をかけた大一番。しかし、FW戦で苦しみ敗戦。優勝を逃しました。
当時の同期とはいまでも仲がよくて、その仲間と最高の舞台を作ってきたのに、成果を出せなくて残念でした。
すごく悔しかったですね、あのときは。

――明早戦は本当に特別ですよね。
当時の早稲田は、能力の高い選手が練習を積み重ねて強くなっていくチームというイメージ。
明治は、早稲田ほど指導が行き渡っていなかったので、個々の素材で勝負したところはありましたね。
でも、それが明治のよさ、学生らしさだと、いまでも思っています。

――明治の10番として意識したことは?
基本的に明治のスタイルは大きく変わらないので、チーム全体を前に出すことを意識していました。
行き当たりばったりの部分も多かったですが、僕自身が前に出て、チームを引っ張っていけたとは思います。

――大学4年間ですべてフル出場を果たした明早戦は、その後のラグビー人生にどんな影響を与えましたか。
その試合にフォーカスして、そこに自分のピークをもっていく。
今回のW杯でもそうでしたが、出場した1戦目(対南アフリカ)と2戦目(対スコットランド)に、自分のピークをもっていくことができました。
4年間でいいレッスンを積めたのかなと思いますね。

明治出身だからこそ感じる「前へ」の奥深さ

――続いて、先日のW杯について聞かせてください。歴史的勝利を挙げた南アフリカ戦は73分からの出場でした。
「決めてこい」という指示を受けて、ピッチに出ました。
あのゲームでは一番いい時間帯。
相手にプレッシャーがかかって個人の技量が問われる場面だったと思います。
そういう状況で、一度はラインブレイクをしましたし、味方を前に出すことでチームに勢いを与えられた。
とにかくゲームを決めようという気持ちでプレーしましたね。

――79分にラインアウトモールでインゴールに侵入。
このとき、最初にグラウンディングをアピールしましたね。トライだと思ってアピールしました。

――テーピングには「前へ」と書かれていました。
これは、明治で培ったものをW杯の大舞台でも出そうと。今でも仲のいい大学の同期から、書いてくれという連絡がLINEで来ました(笑)。地上波の放送でも大きく映ったんですよね?だから、みんなが画面を写メに撮って送ってくれました。友達として本当に支えてもらったので、感動してくれてよかったです。

――その「前へ」という言葉は、田村選手なりにどう解釈していますか。
ラグビーだけではないですが、逃げないことですかね。ラグビーでいえば相手にぶつかっていく。ただ、あまりに意識しすぎると、本来は相手をかわす場面でも、そうできなくなってしまう。それぐらい明治の選手にとっては重い言葉なので、W杯ではそうならないように意識しました。短い言葉ですけど奥が深くて、いまだに、はっきり答えられないところはありますね。

見ている人の心を動かすラグビーをしてほしい

――弟の熙選手は現在、明治の中心選手です。
兄という立場から見て田村熙選手の長所を教えてください。
試合自体をそれほど見たことがないんですけど(笑)、周りの方には「お前より才能あるな」と言われますね(笑)。
「ディフェンスに課題がある」という話を聞いたことがあります。
でも、長所・短所うんぬんよりも、明治というチームで、最上級生としてラグビーをやれる期間は1回しかないので、それを大切にしてほしい。僕にはラグビー以外の時間も含めて特別な1年間だったし、ラグビーはもちろんですけど、寮生活や友達と過ごす時間を含めて充実させてほしいですね。

――4年生として過ごすシーズンはそこまで違うものですか。
僕らの代はキャプテンの杉本(博昭・現クボタスピアーズ)を中心にまとまって、みんなでラグビーを作っていけました。終わり方こそよくなかったんですけど、悔いはないですし、いまでも月に1度は誰かと会うという関係が続いています。

――では最後に、明早戦に挑むチームにメッセージをお願いします。
「ラグビーをやっていてよかった」と思える舞台なので、楽しんでほしい。その上で、見ている人の心を動かすラグビーをして、勝ってもらいたいですね。タックル、パス、キャッチ、サポートと、ベーシックなプレーを正確に継続できれば、絶対に勝てるはずです。

――ちなみに、弟の熙選手へは?
言葉ではなく、体を張ってチームを引っ張っていってほしいですね。

 
田村優(たむら・ゆう)
1989年1月9日生まれ。ポジションはSO、CTB。
國學院栃木高校から明大を経て、2011年にNECグリーンロケッツに加入。
2015年ワールドカップ日本代表の一員として、南アフリカ戦では劇的な逆転勝利に貢献した。