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キヤノン永友監督に聞く 2015年明早戦の勝負の行方 (VOL.12)

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キヤノン永友監督に聞く 2015年明早戦の勝負の行方

今年で91回目を迎えるラグビー明早戦は、どんな展開となるのか。
かつて明治の名SHとして明早戦を何度も経験し、現在はトップリーグのキヤノンイーグルスで監督を務める永友洋司さんに、プロコーチの視点から話を聞きました。



永友洋司(ながとも・ようじ)
都城高校から明治大学へ。現役時代はSH。92年度は主将を務めた。卒業後はサントリーでプレー。現在はトップリーグのキヤノンイーグルス監督。

 



明治

勝利のポイント
①FWで優位に立ち、 CTB中心にラインブレイク
②不用意なペナルティを犯さない

組織と個が両立するディフェンス

今季の明治は、ラインアウトが例年以上に安定している印象を受けます。
しっかりとしたディフェンスを構築する現在のラグビーでは、なかなか流れの中でトライを取りづらい。
だからこそ、敵陣深くでのラインアウトからの攻撃が重要です。
モールを含めた攻撃はすごく成長していると思いますね。
ディフェンスの充実も素晴らしい。
一人ひとりが思い切って前に出たうえで、組織立って守ることができています。
整備された組織の中で、個人のタックル力を生かしたディフェンス。
選手が自分たちのスタイルをよく理解して実践しています。
接点やブレイクダウンの強さでいえば、今季からコーチに就任した阮申騎の存在が大きいですね。
厳しい状況、選手にとっては嫌なシチュエーションでの練習を繰り返し、明治に強いメンタルを植えつけたと思います。
ただし、ペナルティがやや多いのはマイナスポイント。
慶應戦ではラインアウトモールでトライを奪われましたが、これもペナルティが原因。
一見、モールディフェンスの問題に思えますが、その前段階で反則をしないことが明早戦でも大事になってくるはずです。

カギを握るのはキャプテン

BKがラインブレイクする回数が多いことも、今季の明治の特徴です。
CTBの梶村祐介、松浦康一を起点にFBの田村熙が機能し、FWの頑張り、安定したセットピースからBK陣が裏に出るケースが目立ちます。
この明早戦でも、カギを握るのはBKのアタック。
CTBを中心にラインブレイクして、FBの田村がライン攻撃に参加しながら、両WTBにボールを回す展開が明治の理想でしょう。
ただし、FWが相手にしっかりとプレッシャーをかけたうえで、BKにいいボールを供給することが大前提です。
その意味でも、キープレーヤーとなるのは、キャプテンのHO中村駿太ですね。
彼はどの試合でも高いレベルで安定したプレーができます。
ゲームによって出来不出来の差がないので、チームとしては頼もしい存在。
特に明早戦は周囲の期待も大きく、会場の雰囲気も違いますから、浮き足立つ選手が出てくるかもしれない。
そこで冷静な判断をして、チームをまとめられるか。
帝京戦で孤軍奮闘していた、早稲田の岡田一平主将にも同じことが言えますが、キャプテンが平常心を保ってチームをいい方向に導けるかも勝敗をわけるポイントになると思います。


早稲田

勝利のポイント
①ボールをキープして アタックに時間をかける
②両WTBでラインブレイク

藤田が戻れば〝化ける〟可能性も

“アタックの構築に時間をかけてはいるが、完成しきっていない”。
今季の早稲田からはそういう印象を受けます。
ボールを動かしながら攻撃を仕掛けていくという意図は見て取れますが、そこに判断力が伴っていません。
前に出ていくための推進力が足りないので、単にボールを動かすだけに終始してしまっているように見受けられます。
その結果として、ディフェンスにも綻びが生まれています。
早稲田は伝統的に、タックルを含めたディフェンスでペースをつかむチーム。
あくまで個人的な見解ですが、アタックの迷いがディフェンスにも出ているのでは?
それが、帝京戦での大敗(15●92)の原因だと思います。
しかし、アタックでは、外に人が余る状況を作れてはいるので、そこに判断力の高いプレーヤー、日本代表の藤田慶和らが戻ってくれば、チーム自体が大きく変わる可能性はあります。
春から時間をかけて同じラグビーに取り組んできたと思いますので、ちょっとしたきっかけで開花することも十分にありえます。
そうなると、明治には脅威ですね。

早稲田は外でラインブレイクできるか

早稲田が理想とする展開は、ボールを持ってつなぎながら、アタックを仕掛ける時間を長くすること。
横への展開、揺さぶりを伝統とするチームですから、外で余っている選手に、いかにしてよいボールを運べるか。
CTBでブレイクする明治とは逆に両WTBでラインブレイクできるかが、勝利のカギになるでしょう。
また、チーム全体のディフェンスを構築するには長い時間を要しますが、個人に目を向ければ、ディフェンスの8割は気持ちが占めると考えています。
まずは立つべきポジションにしっかりと立って、そこから逃げないこと。
攻撃がいい形でできるようになれば、守りにも好影響を与えるはずですから、そこは期待したところです。
ここまでの対抗戦を見る限り、今季の明早戦は、明治が6対4で有利と見ます。
現状の明治の力であれば、4トライ以上を奪えるでしょう。
ただし、明早戦は少しの差が簡単にひっくり返るゲームでもあるので、明治も決して油断はできませんし、早稲田にもチャンスは確実にあります。
早稲田は、後半20分くらいまでを競った展開に持ち込めれば、面白い。
それまでの60分間のゲーム展開で、結果は大きく変わってくると思います。