新キャプテンの想い
王座奪回を目指すシーズンを迎えた明治。新キャプテンに就任した箸本龍雅は、足元を見つめ、一つずつ積み重ねることの重要性を語る――。
最上級生としての自覚が一体感を生み出す
――4月3日にチームは一時解散となりましたが、それ以降、選手はどのように過ごしているのでしょうか。いつ練習が再開してもいいように、体づくりのためのトレーニングなど、モチベーションを切らさずにやっていました。全体練習ができないのは辛いですが、そのぶん自分にフォーカスできるいい時間になっています。
――こうした状況で、気持ちを切らさずにいるのは正直大変だと思います。
僕個人としては特に問題ありません。ただ、チーム全体の意識を下げないという意味では少し難しい部分もありますね。いまは自分たちでできる範囲の練習を少人数でやっているのですが、そういう場で後輩たちに、「体調はどう?」「どんなトレーニングをやってる?」といった声をかけるなど、特に下級生には気を配りながら練習に取り組んでいます。
――しかし田中監督によれば、チーム解散後の寮生活は非常に規律が保たれていて、昨年よりもいいくらいだという話がありました。
毎晩、夕食後にリーダー陣で集まって、その日のことを振り返ったり、翌日の練習メニューを決めるミーティングを行っています。その中で、寮生活の規律面で問題がないかどうかを話し合えているのが大きいと思いますね。
――リーダー陣だけでなく、4年生全体としても、そういった意識が強いのでしょうか。
そういう意識を持ってもらうために、ミーティングでは一人でも多くの選手に話してもらうようにしています。自覚さえあれば、練習中でも積極的に発言してくれますし、寮内でも後輩の手本になる生活を送ってくれると思うので。僕だけが何かをやるのではなく、多くの選手が役割を持てるようなチームを目指しています。特に今季の4年生は、高校時代にリーダーをやっていた選手がとても多く、キャプテン経験者も8人くらいいます。そういう意味ではしっかり任せれば、力を発揮してくれると思います。

足元を見つめ小さなことを積み重ねるチームに
――改めて、キャプテン就任が決まったときの気持ちを聞かせてください。率直に嬉しいというか、自分がやるときが来たかという感じでした。昨季からチームを引っ張るつもりで取り組んでいましたし、驚きはまったくなかったですね。ただプレーだけでなく、私生活でもチームの顔になる立場なので、そこでもチームの手本になれるように心がけて取り組んでいます。
――高校時代(東福岡)もキャプテンを務めました。
当時の経験を活かせるところもあると思いますが、実際には新たな学びも多く、キャプテンとしてはまだまだ力不足です。
特に難しいのは、先ほども話した周りへの気配り。いつでも頼ってもらえるようにするには、ラグビーだけを頑張っていても難しいので、常に周りを意識して、些細なことでも気さくに話しかけるように心がけています。後輩たちの意見もチームづくりの面では重要なので、そのコミュニケーションは自分の課題としてやっています。
―― 今季のスローガンは「one by one」に決まりました。その理由を教えてください。
オフの間に、4年生一人ひとりにチームの目標を考えてきてもらって話し合いました。そのときに話に出たのが、三冠(対抗戦・ジュニア選手権・大学選手権)といった最終的なゴールを目標とするのか、もしくは、うまくいかなくなったときに立ち返れるものにするのかということ。その2つの案の中で、やはり困ったときに立ち返れるものが必要かなと。
昨季は(大学選手権の)決勝までうまくいっていたにもかかわらず、前半であれだけの大差をつけられて、最終的には追いつけませんでした。慢心ではないのですが、対抗戦では(早稲田に)勝っていたし、この決勝でも勝てるだろうという気の緩みがあって、一つひとつの小さなことが見えなくなっていたと思います。だからこそ足元を見つめ直そう、常に一つひとつ成長していこうという意味で「one by one」に決まりました。あとは一人ひとりが何でも言い合えるチームになろうという意味も込められています。
自分たちが強い明治を取り戻す
――今季のポジションはLOとバックロー、どちらを想定していますか。今季はバックローで勝負したい気持ちが強いです。将来的にはバックローとして戦っていきたいので、少しでも慣れておきたいなと。あとはチャンスの場面でボールを多く触れられるポジションということも大きいです。
――なかでも、どのポジションを目指しますか。
ナンバーエイトがいいです。やはり明治のナンバーエイトは特別なポジションなので、チャレンジしていきたいですね。
――FW全体で言えば、今季はフロントローが全員入れ替わります。FWの一員として考えていることは?
今季最初のFWミーティングでも、そこがカギになるという話が出ました。今ではフロントローの4年生たちが、下級生を集めて、ミーティングをしてくれています。強い自覚があると思うので、もっと引っ張ってくれれば、昨季に劣らないスクラムが組めるようになるはずです。実際のスクラム練習はまだできない状況ですが、コミュニケーションの部分ではよい方向に向かっていると思います。
――最後に、ファンの皆さんにメッセージをお願いします。
自分たちが強い明治を取り戻すという気持ちを持っています。その姿をファンの皆さんに見てもらいたいですね。まずは、今できることにしっかり取り組みたいと思っています。
ファンクラブ会員からの質問に答えます!
Q.箸本主将にとって「前へ」とは?プレー中、アタックの場面でも、ディフェンスの場面でも、常に意識していることです。
Q.選手全員がすべての試合で受けることなく、全力で立ち向かえるようにするために、どのように選手を引っ張っていこうと考えていますか。
試合前の相手の分析、準備をしっかり行って、うまくいかない状況も想定して事前に話し合うことです。焦ると、いつもの力を出せなくなるので、事前の準備がきちんとできていれば受けに回ることはないと思います。