明大ラグビーファンクラブ

最新ニュース

Interview 1 『春シーズンの総括、丹羽メイジの指針』 丹羽政彦新監督(VOL.4)

このエントリーをはてなブックマークに追加
Interview 1
2013年、新体制始動!丹羽政彦新監督に聞く

春シーズンの総括、丹羽メイジの指針

昨年の対抗戦は明早戦でロスタイムの逆転トライをあげ、14年ぶりに優勝を飾った明治。その自信を胸に挑んだ大学選手権だったが、2回戦で東海大に敗れ、涙をのんだ。そして4年間、明治を指揮した吉田義人監督が退任。今季より丹羽政彦新監督が指揮をとる。現役時代、ウイングとして明治の黄金期を支えた丹羽監督のビジョンはとても明快だ。人心一新となった2013年シーズン。昨年までのレギュラーも一気に卒業し、新体制の下で、チームはまさに新しいスタートを切る。


FW一辺倒ではないボールを動かすラグビーで強さを出していく

―春シーズンを終えての感想から聞かせてください。
側面から16年間見て感じていた以上にやらなければいけないことがたくさんあると痛感しました。特に早朝の練習時間を含めた、組織全体のコーディネイトの部分です。そうした練習環境の制約がある中で、今年から取り組もうとしているラグビーを春から継続していますし、学生も授業と練習を両立させながら、よくやってくれていると思います。結果がついてきていませんが、一定の評価はしています。

―就任会見では「FWが前に出て、BKも前に出るスタイルを目指す」と、おっしゃっていました。
明治の伝統的に強いFWに関しては、修正と工夫をしないといけない部分はあるにせよ、これから練習を重ねていけば、秋のシーズンまでにはいい状態にできるかなと感じています。ただ、BKの精度はまだまだ低いのが現状です。FWが前にもっていったボールをBKがさらに前に進めてスコアする。この完成度を上げていかないといけません。

―ホームページに掲載されている春シーズンの試合後の監督コメントは「伝わっていない」「こちらの伝え方に問題がある」といった内容が目立ちました。
試合の結果と内容も含め、イメージが合致していないので当然のコメントだと思います。明治はFWの強さを出すという部分では昨年と変わりません。ただ、昨年よりも、かなりボールを動かしているので、個々の仕事量は増えていると思います。チーム内の一定の規律(ルール)のもとで、個々の判断でボールをつないでいくという点で、イメージとリンクしていないシーンは多々見られました。
過去を振り返ると、明治が強いときは、FWだけではなく、BKも前に出れて強く速い。今年はFW一辺倒にならないラグビーを目指しているので、その中で強さを出していきたいと思っています。
またディフェンスについても、かなり多くの失点をしていますので、ここも具体的なアプローチに対する精度を上げていかなくてはならないと考えています。個人のタックルと組織ディフェンスの連動をしっかりしなくてはなりません。

紫紺をまとう以上は歴史あるチームの選手としてプライドを持ってほしい

―対抗戦優勝を果たした昨季の主力選手の大半が抜け、メンバー編成の視点でも新しいチームに変わります。
春シーズンでAチームに起用した選手の中には、初めて紫紺を着る選手も少なくないです。また選手のパフォーマンスによって頻繁に入れ替えているので、ほとんどメンバーが固まってない状態です。
結果として大量失点につながったゲームがあったにせよ、多くの選手が各チームのAチームの試合を経験したことで、強豪校に勝つためには今まで以上に気持ちの強さが必要だと感じてくれたと思います。これは口で言っても分からないですし、経験しかありません。その点で経験したことは秋に向けてよかったととらえています。

―新キャプテン圓生選手への評価は?
周りの選手を鼓舞して実直にチームを引っ張る、自分自身もプレーで頑張る。本当に立派なキャプテンだと思います。僕も選手であれば、ついていこうと思えるタイプですね。
ただ、周囲の選手が彼に頼りきっている部分がある。そのあたりを選手自身に自覚してほしいと思います。学年に関係なく、明治のジャージーを着る以上、どの相手にも強い気持ちで戦い、必ず相手に勝つという「明治プライド」を持ってほしいです。

―圓生選手を2番から8番にコンバートした理由を教えてください。
彼のワークレートの高さを活かすためです。もともと高校1年生までNo.8をやっていましたし、FW最前列のプレーよりも、全体が見えるポジションでチームを統制してほしいと考えてコンバートしました。

―SОに関しては、たくさんの選手を起用しています。
今年のラグビーは、ハーフ団が非常に重要だと考えています。彼らの判断能力と、全体のゲームマネジメント次第で、今年の明治のラグビーは大きく変わるでしょう。だからこそ、練習で頑張っている選手の中からピックアップして、何人もの選手を試していきました。
もちろん秋シーズンまでもう時間もあまりありませんから、夏からは数名の選手に絞っていこうと考えています。

決められたルールの徹底が理想のラグビーを実現させる


―監督は現在、選手と同じ寮で共同生活を送られています。改めて見えてきたものはありますか?
挨拶、掃除、寮内のいろいろなルールが守られていない。やれと言われればやるのですが、言われないとやらないという風潮は感じます。
僕自身、こうしたことがラグビーに直結すると思っています。決められたルールを守っていかなければ、ゲームでも必要なプレーは出てきませんから。
春はあえて厳しく言うことはしませんでした。上から押さえつけるのは簡単ですが、選手自身に自意識が出てこないと、すべて受身になってしまう。特に今年やろうとしているラグビーには個々の判断力が必要ですから、与えられたことを自分の中で置き換えられる人間でないと、目指すラグビーは実現できません。自分から発信する、自発的にやる力を身につけてほしいと思って、選手たちを見ていました。ですが、まだまだ自分達から律することができていませんので、日々の指導を厳しくすることに決め、選手に習慣づけていこうと、こちらから細かく言うようにしています。

―ラグビーのスタイルや寮生活だけでなく、食事を含めた体づくりにも新たに取り組まれています。
僕の現役時代の食事は栄養管理などなく、常にお腹が満足すればという感覚だったですので、インスタント食品やマヨネーズで育ったような文化でした(笑)。当時と比較すると、今はバランスの取れた食事が提供されていて、とてもありがたいです。現在は今年から最優先している選手個々のフィジカル強化に取り組んでいますが、食事面に関してはとても重要で、管理栄養士、フィットネスコーチ、食事をつくってくださる管理者と話し合いながら進めています。

―帝京や筑波といった強豪校に勝つために必要なことですね。
明治が強かった90年代は他大学に比べてフィジカル面で優っていたのです。大きくて走れるのだからシンプルなラグビーで、体格的なアドバンテージを利用して勝つことができました。BKも人に強い選手が多いのも特徴だったと思います。
今、選手の体格を比べると、身長は明治も大きいのですが、中身で差をつけられていますよ。帝京の選手は筋肉質だけど、明治の選手は脂肪が多かったり細かったり。たとえばBKの選手も、同じ身長で相手が85キロあって走れるのに対し、こっちは73キロしかない。これでは、普通にコンタクトの部分で負けてしまいます。
急には大きくはならないので時間はかかりますけど、筋力アップをしながら、動ける体をつくって、チャンピオン争いに名乗り出るようにしないといけないと思っています。
こういった体づくりの取り組みは、食事に関しても同じで、ラグビーをするうえでの地道な準備をしっかりできる選手になってほしいと思います。強化の方針、部内のルールの徹底は93名いる全部員ができるようにならないと意味がないですし、チームの強さにつながりません。学生王者になるには、こういうことの地道な積み重ねであると話していますので、選手は意識をして取り組んでほしいと思います。

―簡単なように見えて、難しい課題ですね。
厳しいことより楽をしようとする文化は残っていくものです。それは簡単だからです。それを排除して、強かった時代に当たり前にできていたことを復活させていきたいです。これは、体づくりと同じで時間はかかるのですが1年言い続けて積み上げていけば、選手も理解をして個々人が変わってくれると信じています。

―その上で目の前の勝負には勝つ、と。
そうですね。恩師である北島先生は「練習通りやれ」としか言いませんでしたが、やはり学生たちは勝ちたいはずですし、実は北島先生自身も勝敗には非常にこだわっていたと僕は思っています。だからこそ、しっかり準備をして、ゲームでやってきたことを出す。明治の鉄則ですよね。これを1年間やりきれるかどうかだと思います。

―最後に、夏合宿についてうかがいます。これまで恒例となっていた北海道や青森での事前合宿をやめて、菅平からスタートさせるそうですね。
7月から8月上旬は八幡山でウエイトトレーニングとスキル練習をします。暑いですが集中力を高めて行い、そこで準備をして菅平に乗り込みます。菅平では帝京、日大、東海大と戦い、チームの方向性をしっかり落し込みたいと思います。
そこから10月の対抗戦の筑波戦をターゲットにしています。



楽をしようとする文化は残っていくのです。それを排除して、強かった時代、当たり前にできていたことを復活させていきたい。