田中澄憲監督×福田健太主将 スペシャル対談
いよいよ開幕を迎える関東大学対抗戦。王者・帝京を猛追する明治は、1998年以来となる全勝優勝を果たせるのか。
そのキーマンとなるチームの中枢、田中澄憲監督と福田健太主将が2人揃って意気込みを語った。
ターゲットは、あくまで大学選手権決勝。 春は通過点に過ぎません
(メンバー構成は)構想があってもいい意味で裏切られるんですよね
社会人とのゲームでつかんだ大きな手応え
――今季ここまで、順調にチームづくりが進んでいるように外からは見えます。
田中監督
春は個人にフォーカスしたトレーニングが中心で、アタックもディフェンスもチーム全体ではそれほど取り組みませんでした。でも、その中で選手がチャレンジして、競争の中に飛び込んでくれたおかげで、チーム力が上がったと思います。こちらが想像した以上でしたね。
福田主将
昨年、(古川)満さんの代のチームが明治の殻を破ってくれて、僕らはその高いスタンダードを保ったまま、シーズンをスタートできました。その結果、春季大会で優勝できましたし、TLのチームとのゲーム(※編集部注:7月21日=リコー/14●54、7月29日=日野自動車/7●21)でも負けはしましたが、いいチャレンジができました。
――昨年も同じ時期にNTTコミュニケーションズと練習試合を行いましたが、手応えとしては大きく違いますか。
田中監督
去年は確か、スコアできなかったはずです。福田主将
はい。0点です。田中監督
今年は内容が違います。自分たちのアタックができればTL相手でもトライを取れましたし、いいところがたくさん出ました。成長できるヒントというか、選手にとっては新たな刺激になったと思いますね。
――田中監督にうかがいます。
そうしたシーズンを過ごすなかで、福田主将の存在の大きさを改めて感じることはありましたか。
田中監督
彼をキャプテンに指名したのは、肉体的にタフなことに加えて「勝ちたい」という気持ちを強くもっていたから。それはいまの明治に必要ですし、春はこちらが求めたことにコミットしてくれました。ただ、本人にはすでに伝えていますが、本番はこれからです。チームが進化していくには、福田だけでなく、リーダー陣や4年生の姿勢が下級生に波及していかないといけない。その部分はこれからですね。
――では、現状では合格と。
田中監督
いや、ここで合格点を出してしまうとね(笑)。シーズンはここからですから。福田主将
そうですね(笑)。僕としても、ターゲットは来年1月12日の大学選手権決勝に置いているので、春は通過点に過ぎません。あとは、僕個人のパフォーマンス。そこが疎かになると意味がないので、レベルアップしていきたいですね。激しいポジション争いがチーム力を引き上げる
――春のゲームで同じ学生相手に唯一敗れたのが、5月27日の天理大戦( 17 ●24)です。
このゲームに福田主将は出場していませんでしたが、その影響は大きかったのでしょうか。
田中監督
春は天理大戦に限らず、東海大戦の後半も含めて、福田が出ている時間帯と出ていない時間帯ではゲームの内容に差があって、それが今季の課題ですね。天理大戦に関しては元々、福田を出さない予定で、苦しいゲームになることは予想していました。ただ、負けたことをネガティブにはとらえていません。昨年の夏合宿の練習試合もそうでしたが、天理大から学ぶことはたくさんあるんですよね。リロードの速さに現れている、タフに戦い抜く姿勢。負けて改めて、もう一度自分たちも取り組み直さないといけないと感じました。
――ゲームメイクについては、福田主将にかなりの部分を任せているところはありますか。
田中監督
9番、10番がゲームを組み立てていくのは基本ですし、ゲームの中での修正、改善を含めて期待する部分ではあります。福田主将
ラグビーはやはり9番、10番がうまく機能しないと勝てませんし、それだけキーになるポジションです。現状10番は固定されていませんが、うまくコミットし合って、いいハーフ団を組めたらいいなと思いますね。
田中監督
10番は、松尾(将太郎)がケガをしていたこともあって、春はいろんな選手を使いました。その松尾は7月の日野自動車戦で復帰して、いいプレーを見せてくれたので、レギュラー争いも激しくなると思います。やはり、レギュラーが確約されると成長も止まりますし、だから福田にも、もっとプレッシャーをかける選手が出てきてほしいんですけどね(笑)。福田主将
(苦笑)。田中監督
でも、福田はそういったことがなくても成長できる人間ですし、だからこそキャプテンに選びました。そもそも明治が目指しているのは、どの選手が出ても同じラグビーができるチーム。昨季もそうだったのですが、構想があっても、いい意味で裏切られるんですよね。昨季で言えば、この夏の時期に考えていたメンバーと選手権決勝のメンバーは全然違うんです。学生は短い期間ですごく伸びますし、そこにも期待しています。
――合宿を含めた、夏の期間に取り組んできたことは何でしょうか。
田中監督
夏というよりも、7~9月をシーズン通しての第2フェーズととらえています。この期間はユニットの進化や、チーム全体のアタック・ディフェンス、それとキックの使い方を重視しました。特に7月はディフェンスにかなりの時間を割いて、それがTLのチーム相手にどれだけ通用するかを試したのですが、スペースを埋める意識は思ったよりも早く習得できていて、そこには手応えを感じています。福田主将
ディフェンスに入る2枚目の選手、セカンドマンの弱さがありました。そこが機能すれば、失点をもっと抑えられて、ゲームを有利に運べたと思います。ただ、リコー戦も日野自動車戦も外国人選手がたくさん出場していたので、そこは本番に向けていいシミュレーションになりました。今年の対抗戦は、昨季よりもタフな戦いになると予想しています (田中監督)
帝京戦勝利のカギはゲームを通しての全員の集中力
――いよいよ対抗戦が始まります。最初のターゲットは、10月7日の筑波大戦でしょうか。
田中監督
いえ、開幕戦(9月15日・青山学院大)です。そこにチームをいい形でもっていくことが大事。もちろん筑波も力をつけていますし、春も調子がよかったので、ひとつのターゲットにはなるとは思いますが。
――帝京大戦(11月18日)は、どのように位置づけていますか。
福田主将
15人全員がゲームに入り込んで、80分間フルで集中できるかがポイントです。昨季の大学選手権決勝はゲームのターニングポイントで経験や集中力の差が出てしまったので、そこは昨季のゲームを経験した選手がフレッシュな選手をしっかりリードしたいですね。対抗戦でも勝負どころは絶対に来ますし、そこで僕やリーダー陣がひと声かけてチームをまとめられたら、勝利が近づくと思います。
――福田主将の勝負どころでの勘のよさは、監督も期待するところでは?
田中監督
そうですね。ただ、昨季の序盤はまだ若いっていうか、勝ち気な性格が違う方向に出ていて(笑)。福田主将
(苦笑)。田中監督
それが大学選手権決勝という大舞台を経験して、チームの中での役割をすごく考えられるようになったと思います。落ち着きが出ましたよね。