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『首脳陣が明かす、秋のビジョン』丹羽政彦監督・田中澄憲ヘッドコーチ・滝澤佳之FWコーチ(VOL.17)

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首脳陣が明かす、秋のビジョン

明治で活躍し、TLでも実績を残した2人の新任コーチが加わった。
監督と2人のコーチに強化ポイントと対抗戦について聞いた。
 

丹羽政彦監督


明治の指揮官となって迎える5度目の対抗戦。
指揮官が見すえるチームの強化ポイントと、ロードマップとは――。

 ここまでいくつか負けたゲームはありましたが、チームの基礎となる部分は積み上げられたと思います。
特に新チーム始動の段階から軸としてきたスクラム。
明治の形が明確になり、選手たちが理解してやってくれたことが大きいですね。
そこに手応えを感じています。

また、サイズアップした体で、より動けるようになったことも収穫です。
ここからはいかにプレーの精度を上げていくか。
そのためには相手に関係なく、常に100パーセントを出す姿勢が必要です。
明治の指導をしてきて常に思うのは、試合での最大のテーマは「明治は自分自身」という事です。
とても重要なファクター。
チャレンジする気持ちでどんな局面でも春から積上げたことを信じて「実行」する力。
強い気持ちで試合に臨むことが、大学王者になるための最低条件。
春の慶應戦の敗戦(28●33/5月28日)が象徴する試合です。
楽なゲームはひとつもありません。

 その意味で、カギを握るのは4年生。
今季の最上級生はまとまりがあり、本音で話せて、常にチームのことを考えて行動できています。
ゲームに出ている、出ていないに関わらず、ミーティングでは積極的に意見が出ますし、春シーズンに主将の古川、副将の梶村がいない中でも一定の成果が出ていたのは、4年生全体の頑張りがあったからです。
さらに、3年生もチーム作りに協力的で「今年は優勝する」という意気込みを強く感じます。
福田や松尾、祝原や井上など昨年からAチームで出ていた選手を中心に積極的にコミュ二ケーションを取っていて、頼もしさを感じますね。

こうした上級生の姿勢に1、2年生が引っ張られるという相乗効果も生まれつつあり、学年を超えたコミュ二ケーションが活発になれば、選手たちで改善できる問題がもっと増えるはず。
明治というチームが殻を破れるタイミングに来ています。

高い攻撃力を生かすためにディフェンスを強化


 この夏は、特にディフェンスの強化に取り組んできました。
今季はルールが改正され、相手ボールキャリアに対しての働きかけが難しくなっています。
そこを克服するには、ディフェンスの場面で積極的に前に出て、ボールの取りどころを少しでも高くしないといけません。

そのために1対1のディフェンスだけでなく、2人目の働きかけを意識させています。ディフェンスラインの横のコミュ二ケーションはかなりよくなってきているので、精度をもっと高めていきたいですね。
 また、7月からモールのアタック&ディフェンスにも時間を割いてきました。
FWコーチの滝澤と選手たちが懸命に取り組んでくれているので、結果は出るはずです。
明治はやはりアタックに力のあるチーム。
その攻撃力を生かすためにも、ディフェンスの向上は欠かせません。
本番では強豪校相手にも、1試合あたりの被トライ数を2本くらいに抑えられるような守備を目指していきたいですね。

シーズン終盤になっても伸びるチームを目指す


 今季は最後まで戦い抜けるチームを目指しているので、シーズンが始まっても練習強度を落とさずに強化を進めていきます。
特にジュニア戦も重なる9月、10月はゲームを経験することで選手個々の能力がさらに伸びていくと想定していますし、安泰と言えるポジションはありません。
各ポジションとも多くのメンバーを試しながら、大きなヤマ場となる帝京戦に臨むイメージです。
 FW、BKともにあらゆるプレーで、大学ナンバーワンの強さと精度を求めて強化を進めているので、まずは対抗戦優勝を目指して21年振りに大学チャンピオンを達成したいと思います。皆様、熱い声援をよろしくお願いします。

田中澄憲ヘッドコーチ


就任の段階で、まずはセットピースを中心に強いFWを作ろうと考えました。
ファンの方の期待を含めて、やはり明治といえばスクラム。
そこに関しては、ここまで一定の成果は出ています。
今のラグビーではFW8 人全員で押すことが常識。
特にバックファイブのメンタリティはすごく変わりましたね。

 あとは、攻守の切り替えを含めた意識の部分。
昨年のゲームを見ると、ラインブレイクをされたピンチの場面で歩いて戻っていたり、100%力を出し切っていない印象があったので、そこを変えていこうと。
BIG(バックインゲーム)と言っていますが、タックルして倒れたらすぐに起き上がってゲームに参加する。
その意識がチーム内に浸透しつつあります。

 ラグビーの能力があっても全力を出せない選手は信頼できないですし、何より仲間から信頼されません。
タックルをする。
すぐに立つ。
きついときでも走る。
こういう厳しいプレーをできるかどうかが、選手起用の大きな判断基準になると思いますね。

 BKのアタックに関しても、決まり事を大きく減らし、状況判断をして攻める形に変えました。
選手には難しいことを要求していると思いますし、決められているほうが簡単です。
しかし、僕らスタッフはグラウンドに立てるわけではありません。
結局のところ試合でプレーを判断していくのは選手自身。
その判断力がなければ勝つのは難しいですし、人に言われたことをやっているだけでは成長しません。
少しずつですが選手同士がコミュニケーションをとりながら、スペースを見つけてアタックできるようになってきたので、不必要なキックはかなり減ってきたと思います。

 帝京との違いはつまりこういう部分です。
フィジカルやスクラム、選手のスキルなどは大きく変わりませんが、選手が考えて動く力にはまだ差があります。
そしてどの相手に対しても試合開始から常に100%の力を出しきるマインドを植え付けていきたいです。
春から積み上げてきた強みを生かし、僕自身もHCとして優勝という結果を求めていきます。

滝澤佳之FWコーチ


実際に指導し始めて感じたのは、選手たちの一生懸命さ。
特に主将の(古川)満を中心に4年生はすごくいいリーダーシップを持っています。
あるとき、ラインアウトのムーブを発表して、次の日に練習でやろうと思っていたら、前日の夜に選手たちがすでに自主的に練習していて、グラウンドに出た段階では全員が動けていました。
そういった団結力は本当に素晴らしいと思いますね。

 スクラムに関しては当初、低さや背中を地面と並行にすることなど、体の姿勢に甘さがありました。
特にバックファイブの選手の意識がフロントローに比べて低かった。
時間がかかるかなと思っていたんですけど、やはり選手たちの気持ち
が強いので、選手同士で指摘しあって、想定よりも早くまとまってきましたね。
今ではバックファイブのほうが高い意識を持つようになったので、ここからスクラムを強くする上で、やはりフロントローの3人の成長が不可欠。
そこが秋に向けての課題です。

 指導哲学というほどのものではないですが、スクラムは8人で押して8人で押されることが理想。
夏にNTT コミュニケーションズさんと練習試合をしたとき、スクラムを押されてLO、FLまで含めて全員がひっくり返っていました。
押されはしましたが、8人がまとまっている証拠ですし、徐々にいい形に近づいています。

 モールは夏から着手しました。
僕は、スクラムとモールは同じだと考えているので焦りはありません。
つまり、スクラムが強ければ、決まり事を作ってトレーニングを重ねた段階で、モールも同じだけ強くなる。
一つひとつを中途半端にしないという田中HCの考えに自分も納得していましたので、まずスクラムから着手しました。
ただしモールで簡単にトライを取れるわけではありません。
失敗してもそこで下を向かない。
やり続けて、歩みを止めないことが大事ですね。

 ラインアウトも含めて、すべてにおいて大切なのは、やると決めたら全員がその方針や形を信じてやりきること。
秋は相手に応じた対策も出てきますが、ここまで積み上げた基本を信じて戦います。